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恋のマッチアップ番外編 膠着状態12

Auteur: 相沢蒼依
last update Date de publication: 2026-01-05 14:09:53

「エッチな俺は嫌?」

「俺は男だ、そんな対象じゃないだろ」

 俺が喚くと、加賀屋は顔の前にある両手を力ずくで外した。まっすぐ注がれるまなざしに、うっと言葉を飲む。

「そんなの関係ない。だって笹良だから」

「でも……」

「笹良の全部を、俺のものにしたい」

「うぁ、そんな、の」

「このまま強引にしようと思えば、スムーズにコトを進められる。だけどそれをしたくない俺の気持ち、わかってくれよ」

「加賀屋……」

「俺のこと、気になってるんだろ?」

「ぅ、うん」

 加賀屋に導かれるように、すんなりと答えてしまった。それは嘘偽りのない気持ちだったので、あっさり告げることができたのだが――。

「気になる俺に触れられるの、嫌か?」

「嫌……じゃなく、恥ずかしくて」

「俺も恥ずかしいよ。だけど笹良だから、全部見せられるんだ」

「加賀屋も?」

 恐るおそる訊ねたら、加賀屋は満面の笑みを浮かべた。

「大好きな笹良に、俺のすべてをあげることができる。もらってくれないか?」

 徐々に掠れる加賀屋の声を聞いただけで、なぜだかさっきよりも躰が熱くなった。触れられるだけじゃなく、見られることでも羞恥心を煽られていたのに
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  • BL小説短編集   ハンドルはふたりの誓いのリング15

    *** 一週間後、野木沢から連絡が入ったので、都合のいい日に店に向かうことにした。「あーあ、陽さんよりも早くお店に着いちゃった……」 中をこっそり覗き見ると、いつも早く到着している橋本が来ておらず、宮本は微妙な表情をキープしたまま店内に入った。「宮本様、いらっしゃいませ!」 営業スマイル全開の野木沢に見つめられるだけで、この間のやり取りを思い出し、背中に嫌な汗が噴き出す。「ど、どうもです」 後頭部をバリバリ掻きながら、きまり悪そうにしている宮本を、野木沢は微笑みを唇に湛えて眺めた。「宮本様とやりあったあと、次の日に橋本が店に来たんです」「えっ?」 そんな話をひとことも聞いていなかったこともあり、宮本はビックリするしかなかった。「僕の目の前で、橋本にものすごく惚気られましてね。「アイツ以外ほしくない。アイツじゃないと俺はもう駄目なくらい、とことん惚れ込んでる」なぁんてデレた顔で言われたせいで、あえなく玉砕させられました」「陽さんがそんなことを……」 実際に聞いてみたかったと、思わずにはいられない。どんな顔でどんな声色で、それを野木沢に告げたのか――二次元についての想像力には自信があったけれど、橋本に関することは、からっきしダメなのを自覚しているので、残念でならなかった。「僕らはもうあの頃には戻れないんだって、改めて思いました。年数が経ちすぎたせいでしょうね。橋本の考え方が変わっていたし」「確かに学生時代と社会人じゃ、いろいろ変わって当然かと……」「でも橋本の好みは変わってないと、思っていたんだけどなぁ。そこのところがすっごく残念でした」「まぁ確かに、陽さん面食いですし」「何気に、自分はいい男だって言ってます?」 笑いながら野木沢に突っ込まれ、宮本は思いっきりあたふたした。「ちちちっ、違いますっ! 俺はいい男じゃないですけど……」「けど?」 語尾の上がった独特な問いかけに、ごくりと唾を飲み込んだ。アレを言うならこのタイミングだと考え、両手を強く握りしめる。「えっと、むぅ…あのですね俺が陽さんを抱いているので、もう離れられないっていうか」「えっ?」 宮本のセリフに、野木沢は目を丸くした。まじまじと宮本を凝視し、そのまま固まる。「ぉ、おお俺が陽さんを抱いてるんですっ。なにか疑問はありますか?」

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    目尻に笑い皺を作って微笑んだ橋本を見て、野木沢も同じような表情を作った。「学生時代の橋本なら、喜んで飛びついたでしょ?」「そうだな。だけど時間が経ちすぎた上に、雅輝が相手じゃ分が悪かったわけか」 野木沢は橋本の言葉に、笑いながら額に手を当てる。「橋本がとことん惚れた相手じゃ、無理なわけだよね」「ああ……」「同性婚するからそれの証しに、ペアリングを作ろうと思ったんだ?」「そのつもりさ。だから野木沢の店に来てるんだけど。作ってくれないのか?」 即答したセリフを聞いた途端に、力なくその場にしゃがみ込む野木沢を見て、橋本はカラカラ笑い声を立てた。「わかりやすいリアクション、サンキューな」「ノックダウンさせられたよ、参った……。それで、どんなデザインをご所望ですか、お客様」 野木沢はよいしょと呟きながら、やっと立ち上がった。橋本に見せる顔には、すでに悲壮感が漂っておらず、一番最初に店で見た商売人としての表情がそこにあった。その切り替えの早さに、すごいなと思わずにはいられない。「野木沢、おまえ――」「どんなものにするか、早く言ってほしいんだけど。好きだった男のペアリングを作る、僕の気持ちを考えてくれよ」 腰に手を当てて自分を見上げる野木沢の迫力は、橋本がたじろいでしまうものだった。「わ、悪い。えっと雅輝と出逢ったきっかけが車関連だったから、それをモチーフにしてほしいなと思って」「了解。すっごいデザイン考えて、橋本からお金をふんだくってやるよ。できたら宮本様に連絡するから、楽しみに待ってて」 あからさますぎる笑顔を振りまいたと思ったら、さっさと店の中に消える。「ありがと、野木沢。楽しみに待ってる」 橋本はあえて追いかけず、扉に向かって囁いたのだった。

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    ジャケットのポケットから名刺を取り出して、お客様に渡すように野木沢に見せた。嬉しさを頬に滲ませながら受け取る様子に、橋本は真顔でぴしゃりと言い放つ。「ただし友達としてな。それ以上は勘弁してくれ」「橋本……」「雅輝と付き合う前までは、ワンナイトラブとか躰だけの関係がへっちゃらだった。片想いしてたせいでそういうコトして、現実から目を逸らしてた」「宮本様に出逢って、橋本は変わったのか」「アイツ、俺が片想いしてるの知ってるくせに、告白してきてさ。玉砕覚悟以前の問題だろ、それって。なのに真正面から俺に告ってきた、すげぇヤツなんだ。まんま価値観を変えさせられたって感じ」 橋本は宮本にプレゼントされたネクタイピンに触れながら、切なげに微笑む。そんな様子を目の当たりにして、野木沢はいいようのない表情になった。「片想いを覆すほどの強い気持ちを、打ち明けられたってわけか……」「見た目の良さそうな相手と深く関わっていくうちに人柄を理解して、さらに好きになっていった過程が、ガラッと変えられたんだ。一気に恋に落ちた気分だったさ」 ひょいと肩を竦めてから、橋本は野木沢に視線を注ぐ。「橋本、おまえ……」 その視線からほとばしるような熱情を感じたせいで、野木沢はひゅっと息を飲んだ。「アイツ以外ほしくない。アイツじゃないと俺はもう駄目なくらい、とことん惚れ込んでる。だから野木沢、おまえの想いには答えられない」 注がれる視線から逃れるために、首を垂れたのを確認したので、橋本は店を仰ぎ見た。有名ブランド店が並んでいるというのに、そんな中にあっても見劣りしない野木沢の店をすごいなと思いながら、しげしげと眺めた。「橋本と宮本様を見て、わかってたのにな。もう昔には戻れないって」「わかってたのに、わざわざ雅輝に絡むなんて。バカだよ野木沢」「だって好きだった橋本に再会したせいで、ぶわっと再燃しちゃったからね。あの頃の気持ちが」 あーあと言いながら店のドアに背を預けた野木沢を、橋本は無言のまま見つめる。「橋本ってば昔よりもさらに格好良くなってるし、惹かれずにはいられなかったんだって。どうしても欲しくなっちゃったんだ。だからあのときと同じように、迫ろうってなってね」「恋人のいる俺の貞操観念を試そうとしたのかよ。怖いな」

  • BL小説短編集   ハンドルはふたりの誓いのリング12

    *** 次の日、橋本は隙間時間を作り、野木沢の店に向かった。「あれで一応手加減したって言うんだから、本気で抱かれた日にゃ、俺の躰は壊れちまうかもしれない……」 昨夜の行為のせいで、げんなりしながら痛む腰を擦りつつ、店の扉を開けようとしたら、微笑ましい様子の異性のカップルが出ようとしたのか、タイミング悪く橋本と鉢合わせになった。「すみません」 慌てて一歩退き、出やすいように対処した橋本に、カップルは一礼して店をあとにした。幸せそうな雰囲気を醸しているカップルを、何とはなしに目で追っていると。「橋本……」 客を見送ろうとしたらしい野木沢が、弱々しく声をかけた。「よっ! 昨日は途中退席して悪かったな」「もしかして……。ペアリング作るの断りにきたのか?」 明るく話しかけた橋本とは相反して、野木沢はらしくないくらいに沈んだ表情だった。「おまえのデザイン気に入ってるのに、断るわけないだろ」 ジャケットからネクタイピンを出して、わざわざ見えるようにしたのに、顔を逸らしてあらぬ方を眺めた。「……宮本様から、何も聞いてないのか?」「聞いたさ。野木沢がイケメンで羨ましいだって」「そうじゃなく――」「陽さんって昔から面食いなんですねって、呆れながら言われた」 ネクタイピンをもとに戻し、身なりを整えた橋本のセリフを聞いて、大きなため息をつく。「宮本様は僕のこと、悪く言わなかったのか?」「悪く言うもなにも、自己嫌悪に陥ってた。陽さんの隣に俺みたいなのがいていいのか、みたいな」「…………」「バカだよな~。人は見た目じゃねぇのにさ」「あのさ橋本、あの頃に戻れないかな?」 自分の本心を伝えるために、芝居がかった口調で語気を強めた橋本を野木沢は直視し、想いをぶつけた。「あの頃?」「僕が困ったときに手を差し伸べてくれた、学生時代のように。橋本の傍にいたいんだ」「別に構わないけど」「ホント!?」 断られると思っていただけに、スムーズに願いが叶ったお蔭で、野木沢の沈んでいた気持ちがみるみるうちに浮上する。「ああ、本当。ほら、これが俺の連絡先」

  • BL小説短編集   ハンドルはふたりの誓いのリング11

    橋本のセリフに耳を傾けながら、店でのやり取りを思い出す。言葉巧みに責められっぱなしな上に、自分との見た目の比較など、落ち込む要因しかなかった。それだけに、宮本は目から鱗が落ちた。「なるほど……」「今度店に顔を出したとき、胸を張って言ってやれ。『陽さんを抱いてます』ってな。腰抜かすかもしれねぇぞ!」「ついでに、陽さんの腰を抜かしてあげたいんですけど」 とても小さな声でのおねだりだったが密閉空間ゆえに、橋本の耳にしっかりと聞こえてしまった。「何を言ってやがる……」「見てわかるでしょ。俺の――」 言いながら自身の下半身に指を差す宮本の姿に、橋本はギョッとして顎を引いた。「今夜は陽さんがやめろって言っても、めちゃくちゃにしちゃうかもしれません」「俺、明日も仕事なんだぞ。ちょっとくらいは手加減してくれ」 濡れた髪をかき上げて立ち上がり、そっぽを向く。頬だけじゃなく耳まで赤くなっている様子に、宮本の笑みが隠しきれなくなった。声を立てて笑うと、浴室に反響しまくる。「雅輝……」「やっぱり陽さんには敵わないな。沈んでいた俺の心を、一瞬で持ち上げるんだから」 宮本は勢い良く立ち上がって、橋本に抱きついた。強く抱きしめたはずじゃなかったのに、喘ぎ声に似た声が口から漏れ聞こえる。「まずは陽さんが感じやすい、バックからしたいんだけど」 耳元で甘やかに囁かれた言葉に、橋本は黙ったまま頷いた。 峠のコーナーを容赦なく攻めるような無茶ぶりはしなかったものの、熱の入った宮本の行為に、橋本はなすすべがなかったのだった。

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     浴室に宮本の断言する声が響いた。「雅輝、ホントおまえってばバカだな」「バカなのはわかってる。陽さんが江藤ちんと逢ったときの気持ちが、野木沢さんに逢ってやっとわかったくらいだし」 宮本はしゅんとして、なぜかその場に正座をした。「ごめんね、陽さん」「なにがだよ?」 正座をした宮本の前にしゃがみ込み、顔を覗き込む。橋本の視線を受けて、目の前にある顔が慌てふためいた。「陽さんってば、そんな色っぽい顔を近づけないでくださいよ。理性をきちんと押し留める、俺の気持ちも考えてください」「もっと雅輝の気持ちを教えてくれ。野木沢に俺と関係があったって聞いたとき、どんな気持ちになったんだ?」 顔を近づけるなと注意されたばかりだというのに、橋本はわざと顔を近づけた。宮本は大好きな恋人の顔をまじまじと見つめながら、ごくりと喉を鳴らす。「雅輝、ほら吐いちまえって」「あ、えっと……、野木沢さんは陽さんの好みなんだなって。俺と違ってイケメンだし、漂ってる雰囲気が上品な感じで、俺と違いすぎると思ったら、自然と落ち込んじゃった。陽さんの相手が不細工な俺でいいのかと」「俺も思った。江藤ちんみたいなイケメンじゃねぇし」「そんなことないっ! 陽さんは俺にはもったいないくらいの、すっごくいい男です」「ハハッ、ありがとな。そんでもってその言葉、そのまま返してやるよ」 言いながら宮本の頬を、橋本は両手で包み込んだ。「おまえの持つ純真無垢な心は、見た目のいい野木沢が持ってない、すげぇものなんだぞ。雅輝は俺にとって、もったいないくらいのいい男さ」「陽さん……」 太い眉をへの字にして、あからさまにしょんぼりしている宮本に、橋本は触れるだけのキスをした。「おまえ野木沢に、俺を抱いてること言ってないだろ?」「そんなこと言う雰囲気じゃなかったです」「それなら好都合だ」「好都合?」 宮本は橋本に顔を掴まれたまま、わけがわからず首を傾げる。そんな不思議顔をしている恋人を、優しいまなざしで見つめた。「アイツは、おまえが俺に抱かれてると思ってる。つまり同じネコだと思って、今回ケンカをふっかけてきたということさ」

  • BL小説短編集   陽さんΣ(oДo;;)4

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